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『神は、原則人間の人生に関与できない。まだ完全に僕と分離していない今なら、君を元の世界に返してあげられる』
「分かってるよ」
姿は見えないが、声だけで神様が私のことを心配してくれているのが伝わってきた。
一週間前、私の夢に現れた神様は言った。
『僕の力が完全に回復し、近いうちに君と分離してしまうだろう。そうなると君に力を使うことができなくなる。その前に、元の世界に帰るか否かの決断を下してほしい』と。
その答えを告げに来たのが今、というわけだ。
私は、この異世界に残ることに決めた。
これは私の自分勝手な決断なのだと思う。
元の世界に戻らなかったことを、後悔する日が来るかもしれない。
だけど、私はそれでもジェラルドの傍にいたかったのだ。
ニコラスやエミールくん、エルミナさんたちと過ごしたこの国から離れたくない。
『この国のことを、そんなに気に入ってくれたのか』
「……うん。神様と同化していたせいなのかな。この国にも、人にも、愛着が沸いちゃったの」
『それで元の世界を捨てるというのか。君は……』
「呆れてるの? 馬鹿だなって」
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