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それなのに、突然安定感が無くなった。
なんだか……とてつもなく嫌な予感がする。
そろりと視線を下に向ければ、アスファルトを踏んでいたはずの私の両足は地面についていなかった。
「え……」
ぽっかりと、穴が開いている。
深すぎて、底が見えない。
「待って……?」
声を上げた時にはもう遅い。
引力に引かれるように、一気に落下が始まる。
「う、嘘でしょーーーー!?」
私は助けを求めるように、宙に向かって手を伸ばした。
だが、伸ばした手は無情にも空をかくばかり。
――あ、私の人生終わった。
神様、仏様。
私が生きてきた、短いながらも16年間。
このたった16年間で、いきなり得体の知れない穴に落とされるようなことを私はなにかしましたか?
私は、良くも悪くも至って普通に生きてきた人間だ。
取り立てて大きな悪事なんて、働いたことはないんですよ。
だから、誰か助けて。
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