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「ま、待て待て待て! 今は君を元の世界に送り届ける力が足りないだけだ! 時期が来れば必ず元の世界に戻してやる! だから落ち着け!」
「……ホントでしょうね?」
「本当だとも! 僕は嘘はつかない!」
怪しい。
だが、信じるほかない。
諦めて息を吐き出した私に、神様はあからさまにほっとした顔をした。
「それまでの間、僕の世界にいるといい。歓迎する」
「僕の世界……?」
どこにあるというのだろう。その僕の世界とやらは。
急に穴に落とされて、目の前には自称神様の青年。今ならどんな不可思議なことでも受け入れられそうだ。
というか、今更だけど私、白昼夢でも見ているんじゃない?
絶対これ夢でしょ。
「僕の世界は、この空間の真下に存在する。君の世界はこの上だね。つまりここは中間」
「はぁ」
自称神様はつい、と指先で上やら下やらを示してくれる。
だが、あいにくここは上下左右真っ白な空間だ。分かりにくいにも程がある。
「上へ引き上げることは難しいが、下へ落とすことは簡単だ」
気の抜けた返事しかできない私を気にした素振りもなく、自称神様はパチンと指を鳴らした。
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