黒に包まれた再会(1)

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黒に包まれた再会(1)

黒衣の娘は塔の内部にある階段を上がってきた。 コツン、コツン…真っ黒の階段に娘のはいているブーツ音が響く。 ………四天王は倒した。 四人ともそれぞれの属性魔法の専門家だった。 使ってくる魔法もかなり強力だったけど、弱点を突けば、確実に倒せる。 ……そう、あたしの方が強かったということ。 …四天王など、どれほどのこともない、名前負けもいいところ。 偉そうな四天王は、あたしの相手にはならなかった。 冒険を通じ、魔法という魔法をきわめたあたしの圧倒的能力の前に四天王は敗れ去ったのだ。 ……あたしは、毎日毎日、山を見ては考えた、海を見ては考えた。 ……地を踏みつけ、空を仰いでは考え続けた。 ……どうすれば、勝利の栄光をつかみとれるのだろうと。 ……絶対に負けないようにするには、どうすればいいのだろうと。 ……立ちはだかるものを跡形無く殲滅(せんめつ)するには、どうすればいいのだろうと。 …………あたしはただ、それだけを考えてきた。 そうして、今…あたしは勝利した。 四天王との戦いで証明されたのだ! あたしの考えは正しかった、ということが。 次は、黒き塔の主・ウィザードとの戦い。 誰が出てこようと、覚悟はできている。 これまでとは別次元のとんでもない相手であろうことは、十分に承知。 さあ、誰であろうとくるがいい。 この、あたしの前に立ちふさがるなど、愚かなるものよ! コツン、コツン、コツン……。 ブーツの音を響かせて、娘は階段をのぼりきった。 扉が開いている入り口があった。 広い部屋の内部が見える。 娘は部屋へと足を踏み入れた。 娘は初めて入った部屋の内部をぐるりと見渡した。 床もいま上がってきた階段と同様に漆黒である。 壁もそうであったが、黒い鏡のような板が等間隔に貼られている。 暗い水面のように反射する板には娘の顔がぼんやり映っている。 娘の正面には、次の通路へ続くらしい出入り口があった。 ……出入り口……違う。 ……門だ。 黒光りしている門……。 そういえば……この部屋へ来る前に通過してきた四つの部屋、それぞれの四天王の部屋にも、門はあった。 その門の前に立つ四天王を叩き潰し、あたしはここへと進んできた。 …………。 娘は振り返った。 娘の背後は、この広い部屋の入り口である。 次に娘は頭上を見た。 部屋の天井はかなり高く、黒く塗られた頑丈そうな柱がむき出しになっている。 天井へ取り付けられている厚いガラス窓から射し込む光の他に、光源はない。 今日は曇っているため、建物の中も薄暗い。 ……そう思っていると、静かな音がして部屋内に灯りがついた。 目立ってはいなかった天井にある光源が娘を照らした。 足音がして、誰かが近づいてくる。 その足音は、娘の正面から響き、そして声が聞こえた。 「……ようこそ、黒き塔の決戦の間へ」と。 若い男の声だった。 聞いたことがあって、胸の中が愛しさで満たされてしまう気がする、どこか懐かしい声だった。 娘は相手の姿をしっかりとらえようとした。 暗い通路からこちらへ歩んでくる人物は黒衣をまとっている。 その者は黒い門から部屋に入ると娘を見て、微笑んだ。 光が男を照らした。 「…!!??……!!!?」 娘は相手の顔をみとめるや、声を発せなかった。 目を皿にした娘へ代わって、男が先に口を開いた。
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