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「ノノっていう子の代わりなの?」
私はそう尋ねた。
洸が昨日言っていたことを思い出したのだ。
洸は、『ノノと一緒にいる時以外に、こんな気持ちになるの、初めてなんだ』と言った。
「どんな子か知らないけど、私、その女の子の代わりにはなれないよ」
昨日、悲しみを堪える顔をしていたのは、その子と別れたからだったのかもしれない。
洸は、私の言葉に虚をつかれたように目を見開いたかと思うと、ふふ、と息だけで笑った。
「ノノはオスだよ」
壁ドンを解除して言った。
ん?
オス?
「ノノはね、犬なんだ」
私にそう告げると、洸はくるりと私に背を向けた。
口に腕を当てて、どうやら笑っている。
「なっ!洸くんが紛らわしい言い方するから」
「ごめんね」
「笑わないでよ」
「む、無理……」
ひどい。
そこで一生笑ってればいい。
そう思って、私は逃げるように大股で歩き出した。
「あ、待って」
声が追いかけてくる。
「ごめんって。家まで送らせて」
洸はすぐに追いついてきて、私と歩調を合わせた。
***
「じゃあ、また来週ね」
マンションの前で、洸はあっさりと私に別れを告げた。
そして、昨日と同じように、来たのと反対の方へと歩いていく。
私のことを好きだというくせに、連絡先も聞いてこない。
やっぱり、からかわれてるだけだ。
あの男の言葉を真に受けたら負けだ。
洸の後ろ姿を見送りながら、私は自分にそう言い聞かせ続けていた。
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