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「シンデレラって名前の女の子が主人公なんだけど、お父さんが再婚して、継母とその連れ子の継姉たちと一緒に暮らすことになるんだ」
洸が語ったシンデレラの話のあらましは、次のようなものだった。
シンデレラは継母たちにこき使われるが、めげずに過ごす。
そんなある日、お城でパーティーが開かれることになって、継母たちは着飾って出かけていく。
シンデレラは着ていくドレスがなくて、家にひとり残されて悲しむ。
そこに魔法使いが現れて、綺麗なドレスとガラスの靴と、かぼちゃの馬車を出してくれる。
その魔法使いは、午前0時に魔法が解けるから、それまでに帰ってくるようにとシンデレラに告げる。
お城に行ったシンデレラは、パーティーに参加していた王子に見初められる。
王子と楽しい時を過ごすけど、午前0時の鐘が鳴って、シンデレラは慌てて駆け戻る。
その時に、城の階段にガラスの靴を落としてきてしまう。
「そして王子は、そのガラスの靴を手がかりにシンデレラを見つけ出す。町じゅうを捜して、その靴が合うのは、シンデレラひとりだけだったんだ。それから2人は、幸せに暮らしましたとさ。そんなお話だよ」
洸はそう結んで、シンデレラの説明を終えた。
まったく興味がなかったはずなのに、洸の説明が上手すぎて、ストーリーがすんなり頭に入ってきた。
「話は理解できたけど、」
洸のことを少し見直したのを悟られたくなくて、私は否定的になる。
「着飾ったり、王子に出会ったり、結婚したり、そういうのが女の幸せだって決めつけてる感じが、私はあんまり好きじゃない」
私はつまらない人間なのだ。
だから私に絡むのをやめてほしい。
言外に、そんな想いを込めた。
「そうだろうね」
洸は、気を悪くした様子もなく、私の否定的な発言に理解を示した。
「僕も、理乃ちゃんはそういうの好きじゃないだろうなって思う」
普通に受け止められて、拍子抜けする。
女の子にちやほやされたいだけの男かと思っていた。
「確かに、キラキラのドレスとかガラスの靴に惹かれて、シンデレラが好きって子も多いけど、僕は、シンデレラって別に女の子じゃなくてもいいと思うんだ」
秋めく風がザワザワと木々の葉を揺らしている。
風が収まるのを待つように少し間を空けて、洸はさらに続けた。
「不利な状況に置かれても、挫けずに頑張ってたら、信じられないくらいラッキーなことがあるかもよって、そういうお話だと思ってる」
洸はそう言って、にっこりと笑った。
少し癪だけど、納得させられてしまった。
シンデレラもだけど、洸の人気の理由も。
この人は、他人を否定したり、馬鹿にしたりしない。
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