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発車間際の電車に誰かが飛び込んで来た。
と思ったら、洸だった。
ガラガラの車両の中で、私と目が合う。
洸は、明らかに私に気づいた様子だったのに、私が座っているのと反対側のシートに腰を下ろした。
そして、窓の外に知り合いがいるのか、電車が動き出すのと同時に、ぺこりと頭を下げた。
車窓が流れて、洸が頭を下げた相手と思われる人が私からも見えた。
それは、私たちと同じ青風高校の制服を着た、見たことのない女の人だった。
その人は、見えなくなる寸前まで、ずっと笑顔で大きく手を振り続けていた。
電車の中で英語の参考書を開いてみたけど、アルファベットがぐらぐらして、ひどく読みづからかった。
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