4回目の告白

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*** 「今日は同じ電車だったね」  私より先に階段を降りて行った洸は、改札を出たところで何食わぬ顔で声をかけてきた。  本当に分からない。  この人が何を考えているのか。  けど、あれこれ言うのも変かと思って、何もツッコまないまま歩き出した。  雨が結構降っている。  傘を広げようとした私の横で、洸は駅の外に足を踏み出した。  雨に濡れて、制服があっという間に透明になっている。 「傘持ってないの?」 「気にしないで」 「気になるよ」  洸を駅の中に引き戻して、鞄の中を探る。  確か、折り畳みの傘を入れてたはず……。  ……あ。  家を出る時に、要らないと思って玄関に置いてきたんだった。 「理乃ちゃん、本当に大丈夫だよ。濡れて困るものは持ってないし、僕は割と頑丈だから風邪ひいたりもしない」  洸がそう言って、再び歩き出した。  ふと、疑問が浮かんだ。 「さっきまでは濡れてなかったよね。学校から駅まではどうしたの?」  訊きながら、答えが予想できてしまった。  あの手を振ってた女の人か。 「先輩が傘に入れてくれて」  案の定、洸はそう答えた。 「ふうん」  なぜだろう。  私、あの女の人に対抗心を燃やしている。  私が黙って傘を差しかけると、洸は恐縮するみたいに私から離れた。 「いいよ、理乃ちゃんが濡れちゃう」 「先輩の傘には入ったのに?」 「理乃ちゃんには風邪を引かせたくない」 「先輩は風邪引いてもいいの?」  その時、洸の肩にピンク色の染みが付いているのが見えた。 「理乃ちゃんは特別ーーん?」  私が傘を押し付けたから、洸がきょとんとする。  さらに押し付けると、戸惑いながらも持ってくれた。  このリップの染みが、どうしても許せなかった。  洸の肩を掴んで、その染みをこする。  ピンク色の口紅は、雨であっけなく落ちた。 「気づいてなかった。ありがとう……」  洸が、私に傘を差し掛けたまま礼を述べる。  その傘の柄を、洸の方に傾けた。  そのまま洸に身を寄せて、強引に相合傘に持ちこむ。 「言っとくけど、私はリップとか塗ってないから、洸くんのシャツを汚す心配はないよ」  先輩に対する謎の対抗心から、私はそんなことを言った。 「こんなこと理乃ちゃんにされたら僕、溶けてなくなっちゃうかも。もう既にやばいのに」 「何がやばいの」  私との相合傘が嫌なのかと思って尋ねたら。 「理乃ちゃんが近すぎて、ドキドキしてる」 「ああ、はいはい」  まともに聞いた私が馬鹿だった。
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