1回目の告白

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 改札を抜けると、ツクツクボウシが鳴いていた。  日中はまだまだ暑いけど、夏ももう終わる。  刻一刻と大学受験の日が近づいてくる。  本当は、青風高校みたいな偏差値の低い学校に入る予定ではなかった。  もっとレベルが高くて家からも近い、業平高校に行くつもりだった。  私は高校受験に失敗したのだ。    だから、大学受験で挽回できるように、高1の今のうちからしっかり勉強しておく必要がある。  青風高校の連中に関わっている暇はない。   「洸くん、家こっちなの?」  狭い歩道で、後ろを歩く洸にそう問いかけた。  さっさと鞄を取り返して、ひとりになりたかった。  洸は、それには答えずに私の手を引き寄せた。 「危ないよ」  その言葉の通り、私たちのすぐ横を、車が猛スピードで通り抜けていった。  私は人と歩くのに慣れていない。 「えっと……」  手を離してほしい。 「理乃ちゃん、危なっかしいから」  洸は、私の手をギュッと握ってそう言うと、車道側を歩き出した。  いつも女子とつるんでるだけあって、こういうことを自然にできてしまう人なのだ。  でも、私は違う。  人と手を繋ぐなんて、並んで歩く以上に慣れてない。  どうしても歩き方がギクシャクしてしまう。  いま絶対、手汗がヤバい。  好きだと勘違いされる前に、離れなければ。 「洸くんの家はどの辺なの?」  先ほどの問いを改めて投げかけた。  洸の目的地が分かれば、別の道を行ける。  そう思ったのだ。  けど。 「家まで送るよ」  さらりとそう返されては、もう逃げ場がない。    私の家まで、ここから20分以上かかる。  その間ずっと手を繋いで歩くとか、普通に無理だ。  何とか撒けないものかと、寝不足の脳みそをフル回転させるけど、この田舎町では、口実になりそうなものは何も思いつかないーー。  ーーあ、そうだ。  お母さんの事務所があった。  私のお母さんは弁護士で、駅から歩いて5分ほどのところに法律事務所を構えている。  今は誰も使っていないから、勉強に集中したい時は自由に使っていいよと鍵をもらったのだった。  5分くらいなら耐えられる。
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