9回目の告白

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*** 「悪かったなぁ、洸くんのことお母さんに喋ってまって」  お母さんが知慧をお風呂に入れにいった後、パパが私の部屋に謝りにきた。 「まあでも、結果オーライやろ」  勝手に自己完結してくる。  そういうとこやで。   「ゆうとくけど、洸くんとずっと事務所にいたわけちゃうからね」  変な勘違いをされたくなくて、そう訂正した。 「何や、やっぱり遊びにいっとったんか」 「遊びにゆうか、緑葉の方に散歩に行っててん」 「ああ、兄ちゃん緑葉に住んでるゆうてたな。理乃が小さい頃、緑葉の公園によう連れてったなぁ」  パパが懐かしそうに言う。  そうだ、犬のことを訊いてみよう。 「あのさ、私、緑葉で犬拾ったことある?」  私は単刀直入にそう尋ねた。 「あるよ?さっきの絵ぇがそうやん」  パパが即答する。 「お母さんに見つかって、そんなもん飼えん、元いたとこに返してきぃ言われて、理乃がひとりで返しにいったんやんか。俺そん時おらんくてなぁ」  言いながら、パパは私のベッドの上に腰を下ろした。  気安く座らんでよ、と怒りかけたけど、自分も事務所でパパのベッドに座ったのを思い出して、飲み込んだ。  というか、よう考えたら私、洸と添い寝したんやな。  今頃になってドキドキしてきた。 「私、その犬に名前つけてた?」  洸は、私のことを運命だと言った。  その言葉を、私は深く受け止めなかったけど、もう逃げたくない。  逃げ場もないくらい、運命だと思い知りたい。 「おう、ノノて呼んでたやんか」  パパの答えは、決定的だった。 「ほんなら、洸くんが言ってたんは、ほんまのことやったんや……」  娘の呟きに、パパが「何の話や?」と訊きかえしてくる。  私もパパの隣に座った。 「あんな、その犬を引き取ってくれたんは、洸くんやってん」  パパにそう打ち明けた。 「1ヶ月前に死んでまったらしいけど、大事に育ててくれててん」 「ほうやったんか」  パパは驚いたように言った。 「ほな、あのネクタイ、洸くんのかいな」 「ネクタイ?……ああ、あの段ボール箱に入ってたのん?」  さっきパパが手にしていた、紺色のネクタイのことだろう。  でも、あれは明らかに大人もので、小学生がつけるようなものではなかったけど。 「そうや」  パパが断言する。 「覚えてないんか?理乃、男の子に犬引き取ってもらったぁゆうて。ほんで、その男の子がネクタイ落としてったゆうて、持って帰ってきたんやで」  階下でお母さんが知慧のお風呂を終えたらしい音がしている。  それを聞いて、パパは慌てたようにベッドから立ち上がった。  部屋を出る前に、思い出したように付け足した。 「理乃な、そん時、本物の王子様がおったんやぁゆうてたで。ほんでお母さんはカンカンや。王子様なんかおらんゆうてな。 思えば、あん時からやわ。お母さんが理乃に厳しいなったんは」
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