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パパが出て行った後、私はベッドの上に仰向けに倒れ込んだ。
今日はいろんなことがありすぎて疲れた。
テストを受けたのが、遠い昔のことのように思える。
大の字の体勢で目を瞑る。
犬のことは思い出せないけど、確かに緑葉までひとりで歩いていった記憶がある。
遠くて、重たくて、私は途中から泣き出した。
ああ、そうか。
私はあの時、王子様に会ったのかもしれない。
朧げに、白くてキラキラした服を着た男の子が、私に向かって手を振りはじめた。
洸に会ったら、言おう。
疑ってごめんと。
私はずっと傷つくのを怖がっていただけだったと。
そして、好きだと伝えよう。
もう見返りは要らない。
私も一緒にいたいと伝えよう。
それから、洸の主張を聞こう。
次に会えるのは、土日を挟んで月曜日だ。
こんなに何かを待ち遠しく思うのは、初めてのことだった。
***
けれど。
翌週、洸が高校に来ることはなかった。
ネクタイは、返せないまま、日ごとに私の鞄を重くする。
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