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喫茶店で会計を済ませた後、店の前で洸と合流した。
「ごめん、待たせて」
洸が息を切らせながら言う。
洸は、家に荷物を置いてくるついでに着替えたようだ。
くすんだ水色のセットアップスーツになっている。
「何でそんなちゃんとした格好してるん?」
少しドン引きしてそう尋ねた。
「理乃ちゃんに釣り合う服が他になくて」
「そんな格好されたら、私が釣り合わんようになるやん」
「そんなことない。可愛すぎる」
洸が大真面目に答える。
私は、クリーム色のカーディガンに茶色いチェックのスカートという格好だ。
持っている服の中では可愛いのを着てきたけど、スーツにはとても太刀打ちできない。
ほんまに、変な人やな。
洸の服装については深く考えずに、とりあえず駅の方まで行くことにした。
「なんか、洸くん普通やんな」
歩きながら、さっきから思っていたことを言う。
1週間も高校を休んでいるようには見えない。
「がんばって普通に振る舞ってるだけだよ」
洸が笑って答える。
「本当はドキドキしすぎて倒れそうなのを、何とか耐えてる」
その、いつもと変わらない返しに、もはや安心感を覚えてしまう。
「そうゆうとこ含めて普通やゆうてんねん」
私がそうツッコんだら、洸は息だけで笑った。
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