10回目の告白

10/14
前へ
/99ページ
次へ
「ぼ、僕がシンデレラなんだったら、」  照れているのか、洸が口を尖らせて言う。 「いつか魔法が解けちゃうってこと?」  私が結んだネクタイの端を、落ち着きなく触っている。  魔法使いは、綺麗なドレスとガラスの靴でシンデレラを着飾った。  それならーー。   「今日の洸くんがカッコよく見えるのは、魔法のせいなの?それならむしろ、早く解けてほしい」  冗談で言っているわけではなくて、本心だった。  何でこんなにカッコよく見えるのだろう。  スーツを着てるからだろうか。  いや、それだけじゃないようなーー。 「ほんま、いつもと何が違うんやろ……」  洸の顔をじっと見つめる。  私と目が合って、洸はハッとしたように顔を背けた。  耳が真っ赤だ。 「さ、さっき美容院に行ったから、それでだと思う。あんま見ないで……」  消え入りそうな声でそう言って、隠すように髪をかき混ぜている。  なるほど、確かに。  いつもは分け目がどこにあるか分からないくらい髪が跳ねてるのに、今日はビシッとセットされている。  今かき混ぜたせいで台無しだけど。  ていうか。 「照れてるの可愛い。好き」  私は思わずそう口走った。  洸はすぐに赤くなる。  そして、肌が白いから赤くなったのが目立つ。  それが可愛くて、ずっと見ていたくなる。 「ぼ、僕みたいなこと言わないで……」 「仕返しだよ。言われたら困るでしょ?」 「僕のは心の声が漏れちゃってて、不可抗力なんだよ」  それなら私だって不可抗力なのに。  この人は、私の言葉をまだ信じていないのだろうか。 「私、本当に洸くんのこと好きだよ」  何度も言えばそのうち伝わるだろうか。  それとも。 「言葉だけじゃ、信じるの難しい?」  私がそう尋ねると、洸は少したじろいだようだった。 「信じーー」 「キスしたら、分かる?」  私たちの声が被った。  洸は、信じると言いかけたのだろうか。  それなら別に、キスしなくてもいいか。 「する」  洸は短くそう言った。 「え?」  私が訊きかえすと、洸は拗ねたようだった。 「だから、キス、する」 「えっ」  洸の言葉に動揺する。 「理乃ちゃんが言ったんだよ」 「そ、そうだけど……」  あまり本気じゃなかったというか。  いや、覚悟決めないとな。 「理乃ちゃんがしたくないならーー」 「しよ。キスして」  目をつぶって、受け入れ態勢を取った。  緊張する。  ちょっと怖い。  するなら早くしてほしい。 「し、失礼します」  洸が神妙な声で言う。  失礼しますって何やねん。  そうツッコミを入れようとした時、唇に柔らかいものが触れた。 「んっ」  驚いて、声が漏れてしまった。  洸の手が私の頬を支える。  洸の唇が、私の唇を食んでくる。  角度を変えながら、何度も、何度も。  ……長いて。  キスって1秒とかちゃうんか。  こんなん、窒息してまう。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加