10回目の告白

11/14
前へ
/99ページ
次へ
 そのまま、1分くらい経っただろうか。  洸はやっと離れた。  私の顔を見て、嬉しそうに笑う。 「ふふ、理乃ちゃん、真っ赤」 「う、うっさいわ。長いねん」  洸の指が、私の頬を優しく撫でてくる。  その手つきが甘くて、私は洸との関係が変化したことを知る。 「もう分かったやろ。私が洸くんのこと好きって」  分かったなら、少し休憩させてほしい。  心臓がパンクしそうだ。 「んー、まだ分かんないかな。ちょっともう一回キスしてもいい?」  洸がそう言って、顔を近づけてくる。  嘘やろ? 「ま、待って。あんたは慣れてるかしれんけど、こっちは心臓持たへん」  慌てて洸の胸を押して阻止する。 「慣れてないよ。好きな子とのキスがこんなに幸せなものだなんて、知らなかった」  洸は私の手を取って、さらに距離を詰めてくる。 「や、ほんまに無理、心臓壊れる。私が死んだらあんたのせいーー」  のけぞって抵抗していると、洸に音もなく抱きしめられた。  キスを覚悟していた私は、不意打ちすぎて言葉を失った。 「はあ。夢みたい。理乃ちゃんが好きって言ってくれるなんて」  耳元で、息混じりの声でそう囁いてくる。  信じてくれたんや。  そう思って安心したのも束の間。 「っていうか、夢?じゃなきゃ、ありえないよな。まあ、夢でもいいか。覚めなきゃいいだけだもんな」  独り言が大きすぎる。 「何でやねん」  私も洸の背中に手を回す。 「こんな生々しい夢があってたまるか」  夢なんかにはさせない。  絶対に。 「それで、私たち付き合うん?」  抱き合ったまま、洸にそう尋ねた。  洸のことだ。それとこれとは別とか言い出しかねないと思った。  でも、それは杞憂だったようだ。 「僕と付き合ってくれるの?」  私の髪を撫でながら、洸が確認してくる。 「ひとつ条件がある」  なぜか素直に頷けなくて、私はそんな言葉を口にした。  髪を撫でる洸の手が、ぴたりと止まる。 「……条件?」  不安そうな声だ。  すぐ不安になるんやな、この人。 「私にも連絡先教えてほしい」  私が条件の内容を明かすと、洸は安心したように笑った。 「もちろん。僕も理乃ちゃんの連絡先知りたい」  そう言って、尻ポケットからスマホを取り出した。  そして、私たちはやっと連絡先を交換した。 「……幸せすぎるな」  スマホの画面を見つめて、洸が噛み締めるように呟く。  いちいち恥ずかしい人や。  そう思うけれど。 「私も幸せやからね」  私はそう言い返した。  洸にちゃんと伝わっているのか、不安になったのだ。 「私だって洸くんと一緒に過ごしたいと思ってるんやから、もう見返りとか要らんからね」  洸は、私と過ごす見返りに、鞄を持ったりしてくれていた。  今まで私は、それを一方的に受け取るだけだったけれど、今や私たちは対等だ。 「……そんな可愛いこと言われたら、ずっと一緒にいたくなっちゃうな」  スマホをポケットにしまって、洸が困ったように呟く。 「あ、でも学校では今まで通りでいようね。僕と付き合ってるのがバレたら、理乃ちゃんがひどい目に遭っちゃうかもしれないから」 「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」  心配性な洸に、私は笑って言った。 「私の母親、見たでしょ?あの人弁護士なの。娘がいじめられたりしたら、ただじゃおかないよ」  そう言っておどけてみせた私に、洸も笑い返してきた。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加