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「そういえばさっき、見返りがどうとか言ってたけど、」
少し落ち着いたのか、洸が口を開いた。
「僕が理乃ちゃんの鞄を持ってたのは、したくてしてただけだから、これからも持たせてね」
「何で私の鞄なんか持ちたいねん」
そんなん重たいだけやろ。
そう思って尋ねると、洸は微笑みかけてきた。
「見返りとかじゃなくて、理乃ちゃんには尽くしたくなる。だから、尽くさせてほしい。これが僕の要求。僕のしたいことを叶えてくれるんでしょ?」
言葉遊びをするみたいに、そう言った。
「何やそれ」
そんなの、受け入れられない。
「私は洸くんに何にも返せんやん」
それなら今までの関係と変わらない。
私だって、洸のために何かしたいのに。
「じゃあ、僕が尽くすたびに、ほっぺたにチューしてよ」
洸が代案を出すように言う。
「それ、お姫さまごっこやないかい」
思わずツッコんだ。
お姫様ごっこは、私が子供の頃にパパとしていた遊びだ。
「あはは」
洸の笑い声が響く。
まあ、洸が楽しそうならええか。
そう思ってしまう私は、随分とちょろい。
「でも、今日は鞄が重そうじゃないね」
私のハンドバッグを見て、洸が残念そうな声を出す。
どないやねん。
「だって、洸くんに会いにきただけだし」
「勉強もしないで待っててくれてたの?」
「そんな待ってないし」
それに。
「洸くんが学校に来んから、勉強に身が入らんかってん」
私は素直にそう打ち明けた。
恥ず。
「そんなに僕のこと考えてくれてたの?」
洸がヘラヘラと尋ねてくる。
粒立てんな、アホ。
「帰ったら猛勉強するわ。あんたのことなんか一切考えへん」
「そうなの?チャットしようと思ったのに」
「それは、する」
「理乃ちゃん、可愛い」
「うっさいわ」
正直に言うんやなかった。
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