10回目の告白

13/14
前へ
/99ページ
次へ
「そういえばさっき、見返りがどうとか言ってたけど、」  少し落ち着いたのか、洸が口を開いた。 「僕が理乃ちゃんの鞄を持ってたのは、したくてしてただけだから、これからも持たせてね」 「何で私の鞄なんか持ちたいねん」  そんなん重たいだけやろ。  そう思って尋ねると、洸は微笑みかけてきた。 「見返りとかじゃなくて、理乃ちゃんには尽くしたくなる。だから、尽くさせてほしい。これが僕の要求。僕のしたいことを叶えてくれるんでしょ?」  言葉遊びをするみたいに、そう言った。 「何やそれ」  そんなの、受け入れられない。 「私は洸くんに何にも返せんやん」  それなら今までの関係と変わらない。  私だって、洸のために何かしたいのに。 「じゃあ、僕が尽くすたびに、ほっぺたにチューしてよ」  洸が代案を出すように言う。 「それ、お姫さまごっこやないかい」  思わずツッコんだ。  お姫様ごっこは、私が子供の頃にパパとしていた遊びだ。 「あはは」  洸の笑い声が響く。  まあ、洸が楽しそうならええか。  そう思ってしまう私は、随分とちょろい。 「でも、今日は鞄が重そうじゃないね」  私のハンドバッグを見て、洸が残念そうな声を出す。  どないやねん。 「だって、洸くんに会いにきただけだし」 「勉強もしないで待っててくれてたの?」 「そんな待ってないし」  それに。 「洸くんが学校に来んから、勉強に身が入らんかってん」  私は素直にそう打ち明けた。  恥ず。 「そんなに僕のこと考えてくれてたの?」  洸がヘラヘラと尋ねてくる。  粒立てんな、アホ。 「帰ったら猛勉強するわ。あんたのことなんか一切考えへん」 「そうなの?チャットしようと思ったのに」 「それは、する」 「理乃ちゃん、可愛い」 「うっさいわ」  正直に言うんやなかった。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加