10回目の告白

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「僕も、理乃ちゃんに置いてかれないように、ちゃんと勉強しないとな」  恥ずかしさを持て余す私をよそに、洸はそう呟いた。 「何言ってんねん。ぜんぶ満点だった人が」 「全部じゃないよ。ひとつ間違えた」 「結局、それ以外は全部満点やったん?」  私が聞いた時は答案が6科目分しか返ってきていなかったから、残りの3科目分については知らなかった。 「うん。先生に高校辞めるかもって電話したら、英語以外ぜんぶ満点だったのに嘘だろって言ってた」 「そらそうやろ」 「あはは」  笑い事ちゃうわ。  本気で勉強の仕方を教えてほしい。 「それで、高校は続けるんよね?」  念のためにそう確認する。 「うん、続けるよ」  洸が肯定したから、安心した。 「僕、アイドルになってる場合じゃなかった。僕は理乃ちゃんを幸せにするために生まれてきたんだ」  そんなセリフを、恥ずかしげもなく言ってくる。  そういうところはアイドルっぽいけどな。 「そんなこと言って、女の子に囲まれたらヘラヘラして、抱きしめちゃったりするくせに」  私がそう呟くと、洸は急に立ち止まった。  腕を組んでいる私は、つられて立ち止まる。 「理乃ちゃんが嫌だったら、やめるよ?」  洸が真剣な顔で言ってくる。  何やそれ。 「やめれるん?ほんなら今までのは何やってん」 「僕が何をしようが理乃ちゃんは気にしないと思ってたから」 「気にしないわけないやろ」  この男はまったく。  ちゃんと言わな伝わらんのや。 「私、洸くんが他の女の子に可愛いって言ったり、抱きしめたり、キスしたりするの、ぜんぶ嫌。そういうの、私だけにしてほしい」  心が狭いと思われるだろうか。  洸の価値観は、私の言葉を受け入れてくれるだろうか。  そう不安になるけれど。  やっぱり嫌なものは嫌だ。  洸にとってそれが、理解不能だとしても。 「可愛い」  俯きがちになる私の頬に、洸が触れる。  私の顔を引き上げて、求めるような目で見つめてくる。  その瞳に、引き込まれそうで。 「い、いま言えって言ってるわけとちゃう」  私はムードをぶち壊そうとする。  だって、またキスされそうだし。  そうなったらもう、歩けなくなりそうだし。 「僕がいま言いたいから言ってる」  洸は、私の抵抗をものともせずに、甘い空気を作る。 「理乃ちゃん、好き。可愛い。好き。好き。めっちゃ好き。何も考えられなくなるくらい好きーー」 「言い過ぎや」 「全然言い足りない」  洸の顔が近づいてくる。 「こんなこと、絶対にもう、理乃ちゃんにしかしない。だからーー」  唇が触れ合った。  何度も角度を変えて口付けてくる。  触れるたびに、洸の好きが全身に流れ込んでくるみたいで。  こんなん、ほんまに身が持たん。  どれだけの時間が経ったのか、洸はやっと私を解放した。 「大好きだよ、理乃ちゃん」  そう囁く洸の胸に、紺色のネクタイが揺れている。 「帰ろっか」  脱力した私の手を取って、再びゆっくりと歩き出した。
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