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互いに離れがたかったが、バーナード卿は私を助けるため、一つでも手掛かりを探りに来てくれたので事情聴取を受けることになった。それと共に現状を教えてもらう。
「ミラディア王女殿下のご容態はいかがでしょうか?」
「症状からでは毒の特定ができず、まずは毒の解明からの治療となり、初期対応が遅れてしまいました。また、椅子から転倒した際に頭を強打されたようで、依然意識不明の状態が続いております」
「っ。ミラディア王女殿下……」
ミラディア王女殿下にはいつも本当に良くしていただいた。誰にでも気さくで、心優しく、聡明なミラディア王女殿下がこんな形で誰かに害されるなんて、露ほどにも思わなかった。
口を押える手が震えたが、バーナード卿は私の肩にそっと手を置いた。
「まだ意識は戻られておりませんが、命の危機は脱したとのことです」
「そうですか。良かった……」
私は気を取り直して話を進める。
「――では。毒はミラディア王女殿下のカップのみに入っていたということですか?」
「ええ、そうです」
「茶器は全て一度温めるためのお湯を入れ、その後、捨てておりますので、仮に最初から毒が入っていたとしても洗い流されているかと。もちろん全て除き切れてはいないと思いますが。しかし何よりもわたくしがお茶を淹れ終わるまで、誰も茶器を触りませんでした」
お茶の準備は別に用意された小さなテーブルにて皆の前で行い、私の側にはミラディア王女殿下の護衛騎士が付いていた。
「ええ、そうですね。護衛騎士もそう言っていました。また、銀のスプーンで確認するところを見たとも。そこで変化しなかったということは、その瞬間には入っていなかったことになります」
ということは茶器が運ばれ、王女殿下の口に入るまでに毒が入れられたということだ。確かなことは言えないが、誰かが毒を入れられるような瞬間はなかったように思う。一方、お茶を淹れたのは私だが、運んでくれたのは侍女だ。
「わたくし以外に触った方はお茶を運んでくださった侍女さんですが、ミラディア王女殿下専用のティーカップというものはなく、無作為にお出しされたはずです。また、彼女も毒を入れられるような瞬間はなかったように思います。その彼女の取り調べはいかがでしたか」
「はい。身体検査が行われたのですが、彼女からは何も出ませんでした。一方、アリシア様は」
「……鞄の中から毒物が入った瓶が出てきた」
「お聞きになりましたか。ええ。その通りです」
真犯人はあの騒ぎに乗じて毒の瓶を私の鞄に放り込んだかもしれないが、おそらく誰もその姿は見ていないだろう。その結果、鞄の中に入った瓶は私が犯人であることを示すのみだ。
私は重いため息をついた。
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