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部長が必死になるには当然理由があったの。
同好会と部活の違いってわかる?簡単に言ってしまうと規模の差なのよね。
うちの学校では、部員が十人超えないと部活に昇格できないってことになってた。
三人以上九人以下は同好会。その分、部費もかなり低い額しか貰えない。で、二人以下になっちゃうと廃部。同好会としても認めてもらえなくなっちゃうのよ。
文化祭には、いろいろな人が来るでしょう?それこそうちの高校を受験しようかなーって考えてる中学生とかもやってくるわけ。で、もしも漫画研究同好会の展示を見ていいなーって思ってくれたら、ひょっとしたら合格の暁にうちに来てくれるかもしれないでしょう?
その年、うちの部は三年生が三人、二年生が三人、一年生が一人しか入らなかったの。三年生三人が抜けたらかなりのピンチよね。まだ辛うじて同好会ではいられるけど、部誌がかなり薄くなっちゃうのは免れられないわ。
そんなわけだから、この文化祭で少しでも良い部誌を書こう!って部長はかなり燃えていたわけ。もちろんその意気込みは私もわかるから、頑張らなきゃとは思ってたんだけど。
「期待してるよ、マカちゃん!」
部長がびしっと指さしたのは、その年唯一の一年生部員であるマカちゃん。
「君の画力はすんばらしい!バリバリゴリゴリ描いて、ぜひ部員を呼び込んでくれたまえ!目指せ部活動昇格!」
「ぶ、部長ってばー。そんなにプレッシャーかけないでくださいよーう」
照れたように笑う彼女は、ツインテールが可愛い童顔の女の子だった。まだ小学生でも通りそうなくらい小柄で、いつもニコニコ笑ってるような子だったのを覚えてる。
何より彼女の凄いところは、その作画スキル。
彼女は先輩である私や部長よりも絵が上手くて、話も面白かった。それこそ公募に出せば受賞しちゃうかも?と思うくらいに。
実際彼女も漫画家志望と言っていたくらいだから、当時はそのつもりでいたんじゃないかしら。
「でも、頑張ります。わたしも、漫研が部活になってほしいですし」
「うんうん」
「一緒に頑張ろー!」
私達も負けてはいられない。
互いに頷きあって、まずは部誌に載せる漫画のネームを作り始めたってわけ。彼女は25P、私は20P。まあ、このページ数できっちり話を収めるのはなかなか大変で、それはそれとして作画するのもかなり苦労があって頭を悩ませることになるんだけどね。
彼女が描くことにしたのはホラーで、私は現代ファンタジーの話を考えていた気がする。なんで気がする、なのかというと自分が何を描いたのかはあんまり覚えていないからなんだけど。
夏休み前から、私たちの作業は始まってる。うちの活動は夏休みにはないから、休みに入るまでには少なくともネームまでは完成させておかないといけない。
「やば」
この話の肝となるのは、マカちゃんの漫画。
ネーム段階でもこの話が面白い=めちゃくちゃ怖いのがわかって震え上がるほどだったの。彼女は本当にセンスがあったと言えばいいかしら。
面白半分で廃校で肝試しをやってしまった少年少女たちが、次々悪霊に捕まって殺されていく。迫りくる怪異になすすべなくやられていくメンバー、最後にとんでもない真実がわかって――とまあ、だいたいこんな話だったはずよ。
「さ、さすがマカちゃん。めっちゃ怖いわ。これ、完成するのすごく楽しみ!」
「ありがとうございます、冨士先輩」
私の言葉に、マカちゃんは頬を染めて言ったのだった。
「必ず、いい漫画にしてみせますね!」
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