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「私、やっぱり癌だったんだ?」
夜中、夫の仏前に手を会わせていた私に、娘がポツリと呟いた。
一番聞きたくない言葉を。
「私、覚えているよ。髪抜けて、吐き気とかあって。あれ、抗がん剤だったんだよね? そして……、再発したら治療は難しいと、先生と話していたの知ってるんだから」
「違う。違うから……」
否定する声が震え、私はとうとう娘の前で涙を溢してしまい。それは肯定の態度となってしまった。
娘には、病弱な体質だからと説明していた。
この子が抱えている癌は再発率は低いとされているが、もし再発症したら根絶は不可だと聞いていて。
だから、言えなかった。
「やだ! もう病院行かないから!」
そう言い、娘は自分の部屋に閉じこもってしまった。
「治療受けないと!」
「受けて何になるの? 学校行けなくなるじゃない! ……酷いよ。小学生の時は辛くても通ったのに、やっと友達出来て、楽しく通い始めた時に再発するなんて! どうして、どうしてなの?」
その言葉はズシンと重くのしかかる。
本当にそうだよね。
ねえ、神様。どうして、今なのですか?
娘はずっと耐えてきたのに、どうして今?
しかも、どれほどの治療を受けても行き着く先は決まっているなんて。
だけど。このまま治療を受けなければ……。
その日から娘と、私の戦いが始まった。
一刻も早く治療を受けなければならないのに、娘は病院に行くことを激しく拒否し、部屋に閉じこもったままだった。
こうしている間に、病は娘を蝕んでいる。
早くしないと、早く。
どうしたらいい? どうしたら治療を受けてくれる? どう説得したら?
あの頃はまだ二歳で、全ての判断は親と決まっていていたから治療は当たり前の選択で、娘はただ耐えるだけだった。
だけど今は。
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