柊丈一郎の願望

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柊丈一郎の願望

「全員、両手を上げて頭の後ろで組め!」  拳銃を持った男が人質となった客に響き渡る声を出した。仲間と思われる銃を持った女の方は行員が通報装置を押さないか注視していた。  俺は他の客と同じように銀行の隅に集められた。なんでこんなことになったのだろうか。誰もが銀行強盗にパニックになっていた。  俺は鞄の中に隠してある大事な紙幣を見逃してもらうようにずっと気を使っていた。  男が大きなバックを出して受付の前にいる行員に金を詰めろと大声を出している。  受付の女は、びくびくしながら金をバックに詰めていった。受付の女がこちらをちらりと見ると、さらにパニックになっていた。パニックになっているせいで、お金を落として拾うことを繰り返していた。  男が大声を張り上げた。 「何やってる。時間がないんだ。もたもたしてたら、おまえを殺すぞ!」  男が女の頭を拳銃で叩こうとした時に、俺の後ろにいた男が声を出した。後ろにいた男はなぜか薔薇の花束を持っていた。 「やめろ!」  拳銃を持った男はその声に驚いていた。 「おまえはなんだ。殺されたいのか!」 「俺はあんたが暴力を振るおうとしている女の浮気相手だ」  俺は、これはどういうことなんだろうかと思った。俺は強盗が一秒でも早く終わって欲しかった。俺は銀行に預金せずにコツコツと自宅に貯めた一億円を銀行に預ける予定だった。  銀行の支店長と知り合いで預けてくれたら損はしないと言われていた。今日この銀行で預けるつもりだったが、ここから解放されたら、もう銀行に預けるなんてやめよう。とにかく早く銀行強盗が終わりますようにと祈っていた。
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