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回想
ここから先は、そんな私達に降りかかった火の粉の話だ。
その日は、お盆休みの初日だった。
大学生で一人暮らしをしていた北兄ぃが実家に帰ってきて、久しぶりに3人でオンラインゲームなり卓ゲームなり家にあるものをあるだけ全部使って遊び明かしていた時に、ソレは訪れた。
時刻は既に日付けを越えており、住宅街にある我が家の周辺もしんと静まり返っていた。
だから、気がついた。その僅かな変化に。
「ねぇ。なんか変な音がする。」
ボードゲームをひとつ遊び終わり、少し休憩というときに、晴華が不安げに呟いた。
「ほんとだ。なんの音だろうな。」
晴華の言葉にゲームを片付ける手を止めていた北兄ぃが軽く頷いた。
確かに何か聞こえる。
ヒューーという耳障りな風切り声がハウリングするように部屋の四方八方から鳴っているかのようだった。
「ま、そのうち止むんじゃない?それよりさ、」
よくあることだろう。
私はそう思い、次のゲームのリクエストを言おうとした時、ぶつり、と鈍い音が聞こえたような気がした。
同時にマリオネットが吊るされていた糸を切られたような斬撃感がやってきて、
自我を上から凄まじい重圧をかけてかき消したみたいな圧迫感に襲われた。
続けようとした私の声はそこで途絶え、意識が暗転していった。
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