プロローグ

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プロローグ

庭園内のガセボは明るい月に照らされて、中にいる二人の人物が遠くからでも確認できた。 女性と男性の距離は近い。 男は女に身体を密着させて、今からでも事が始まりそうな雰囲気だ。 辺りは静かだった。 ロザリアは彼の正体が誰か知っている。 自分の夫であるビクターだ。 二人は夜会を抜け出し、この庭園のガセボで隠れて会っていたのだろう。 女性のなまめかしい声が聞こえてくる。 嗚咽をこらえてロザリアはその場にとどまった。 まるで動物のそれのような、小刻みに上下する彼の下半身。 女はドレスの上から胸がはみ出している。 気持ちが悪い。 逃げてはいけない。これは旦那様の浮気の証拠になる。 信じていたのに…… 先程まで優しく、妻である自分に声をかけ、会場で私が一人になる事を心配していた。 申し訳ない素振りで、彼は貴族議会の仲間の元へ行ったはずだった。 女の腕が彼のうなじに回される。 二人は興奮しているのか、私が木の側で貴方たちの行動をしっかり見ている事に気が付かない。 もう少し、慎重に事に及ぶべきだったわね…… ビクター。 貴方は終わりよ。
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