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未来学者の話
『未来学』とは近い将来、またはもっと遠くの未来について『何が起きるのか』を推測することです。別に夢やデタラメを語っているのではありません。
現在までに収集された膨大なデータをもとに、未来に起こり得る事態をなるべく正確に予測することで、問題が起きたときの備えを提言することが仕事です。
今、我々はそう遠くない将来に『今の人類史は終わる』と予測しています。ええ、我々にはどうしようもない『地球軽量化問題』によってです。
もともと我々の太陽系は風車のような形をした銀河系の、その羽根1枚の端っこにありました。そして、どうやらそこから飛び出そうとしているらしいと天文学者が計算しています。これは複数の天文台が同様の答えを出していますから、決していい加減な話ではありません。
そして太陽系の周りに天体が少なくなれば、重力が弱まる可能性が指摘されています。そう、我々の周囲の空間を押し返してくれる存在が減るからです。
ここから、地球はより軽量化時代に適応した生物たちの天下になるでしょう。そう、かつての恐竜たちのような。現在の人類が生き残っていける確率がどれほどのものか。我々には全く分かりません。
そうですね。もしも仮に恐竜たちの子孫である鳥類が恐竜に回帰したとして、我々に分はないでしょう。
生き残れるとしたら、例えばアマゾン中流域で今も原始的な生活をしている部族とか、そういう自然とともに暮らしている人たちの方が、我々文明人より遥かにこの変化に強いでしょうね。我々はあまりに脆弱すぎる。
もしくは、神話に出てくるような巨人に進化して生き残るか……。
人間には認知バイアスというものがあり、良くも悪くも明日は今日の延長線上にあると思ってしまう。突然の幸運や不運を前提としないし、受け入れたがろうとしない。が、しかし。
何れにしろ、現世人類の時代はもうこれ以上伸びることはないというのが、我々未来学者たちの共通した意見なのです。
よかった。私が生きている時代にその阿鼻叫喚な地獄を見ずに済んで。我々は地球史上もっともこの世界を謳歌した生物だった。これはとても幸運なことだと言えよう。
済まない、話がすっかりと伸びてしまったね。
では、若い君はその終末の行く末を見つめていてくれたまえ。そしていずれ神の元に呼ばれたならば私に教えてくれないか。世界がどうなったのかを。とても興味があるんだ。
とりあえず神に召されるまで、私はこうしてレストランの片隅で程よく伸びたピッツァを堪能させてもらうとするよ。
完
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