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度量機器工業会の話
ええ、そうです。
今、世界でもっとも騒ぎになっている話題について一番最初に気がついたのは我々『度量機器』……つまり測定器具の業界なんです。
皆さん、『1メートル』とか『1キログラム』って単位使いますよね? あれはISOという国際規格で定められたもので、日本ではメートル法という法律によって標準的に使用されています。
皆さんは、とあるものの長さをどうやって測ります? そうです、定規ですよね。ではその定規が正確かどうかをどうやって証明できると思います?
実は『定規を測る定規』があるんです。
そして、その定規の正しさを測る定規があって……最終的には『メートル原器』という『この長さが1メートル』という大元と比較します。いえ、していました。1983年まではです。それ以降は光の速さを定義にしていますけど。
定義を変更した理由ですか?
簡単です。求められる精度が細かくなりすぎたからです。メートル原器は言ってしまえば『ただの金属棒』なので、常に分子レベルで振動をしています。そのため、ナノメートルサイズや、それ以下での測定においては決して安定した数値がでないのです。
その点、光であれば一定なので安心できます。
よってもうメートル原器は必要ないのですが便宜的に使うことがあって、常にナノレベルでの測定を続けています。
最初に異変を感じたのは2年前だったと思います。
微小レベルでの誤差を記録していたところ、『もしかしたら長いスパンで考えたら伸びている一方なのではないのか』と。伸び縮みを繰り返しながらも、僅かづつ伸びているように思えたのです。
そこで信頼のおける直近のデータをAIで解析し、その仮説を検証しました。
ええ、結果は皆さんご存知の通り『伸びている』でした。いや、正確に言うと極めて微量なレベルではありますが『大きくなっていた』んです。
これが一体何を示すか、当初はまったく分かりませんでした。
しかし、同じ原器である『キログラム原器』においても異変が生じていることが判明し、それに気付いたんです。
はい、キログラム原器がごく微小なレベルながら年々『軽くなっていた』という事実です。
これらが指し示す事実はひとつしかありません。
我々は今ここにひとつの常識が常識ではなかったことを認めざるを得なくなったのです。
そう、地球の重力が変化している……『軽くなっている』という事実について。
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