気候研究者の話

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気候研究者の話

 どうも、我々は気候変動……つまり地球温暖化についての研究をしています。なので、今回の問題とは直接には無関係にも思えるかも知れません。けど、ちょっとだけ我々の話を聞く時間をもって欲しい。  ここ30年、地球の平均気温は1.5度以上も上昇しています。これは地球史から見ればあまりに短期間での大きな伸びです。  ええ、原因は明らかです。人間の化石燃料への過剰な依存が大気の組成を変えてしまい、温暖化が進行した結果です。  え? 1.5度ってことはないだろうって? 少なくともここ数年で夏場の外気温は10度以上上がったんじゃないかって? ええ、その通りです。世界的に見ても都市部においては急激に気温が上昇しています。  でもその反対に『下がっている』部分もあるんです。なので、平均すると1.5度程度に収束してしまう。  問題はこの『異様な偏り』が何処から来ているのか、そのメカニズムがよく分かっていない点なんです。    私は日曜日に欠かさず礼拝に行く割と熱心な信者ではありますが、科学は科学です。そこに神のご意思を持ち出すのは間違ってると分かっています。だがしかし、この訳の分からない状況に対して科学的な説明をつけることは極めて困難なのです。関係するファクターがあまりに多すぎて複雑すぎるからです。  気象学の世界ではバタフライ・エフェクトといって、ほんの僅かなゆらぎですら遠くの気象に大きな影響を与える可能性が示唆されています。我々がその全てを事前に予測することは不可能に近いことなのです。  もしも、です。  もしも仮にここに『何らかの意思』が働く、または『何らかのスイッチが入った』と考えれば話は理解できるかも知れません。  そう、地球を温めるための『スイッチ』が入ったと。  今、地球は大量絶滅期に入ったと言われています。気候変動によって、毎日多くの種が人知れず絶滅しているのです。このスピードはかつて地球が経験したことないほどの速さだ。  そしてその一方で次々と新種が発見されているのも事実です。日本で発見されたヨコヅナイワシという深海魚は、2メートルを超える巨体にも関わらず何と2016年になるまで誰にも発見されなかった。これはとてもアンビリーバブルな話だ。  だが、彼らは今まさにこの世界に適応して生きている。そう、何かが起きようとしているのはもう間違いない。地球は、その準備を始めているように思えてならないのです。  そして、恐竜たちが活躍していた時代は今よりもっと温暖化された気候だった。これが意味することは何か。我々は深く考えるときがきたのだと思う。  もうこの議論について先延ばしをすることは許容されないのです。
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