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椿姫 〜旅〜
〜お出かけ当日〜
「おまたせ」
父が私に明るく言った。今日は、雪が降っており、私は赤い和傘をさしている。憂鬱だ……来なくても良いと思う時に限って早く時間が過ぎるのは何故だろうか。きっと気持ちの問題なのだろうけど……
「いえ、私も今来たところです。」
そう言うと、父は申し訳なさそうに眉を下げた。
「今日は母さんは来ないみたいだ。一応誘いはしたんだがな…」
当たり前だ。余程重要なことでない限り母さんはいつも行かないではないか。そんなことを心の中で思いながらも笑みを貼り付け返事をした。
「分かりました。では、私達だけで楽しみましょう。」
「ああ!」
父は嬉しそうに笑って大きく頷いた。父と私は和服姿のまま雪の上にあとを残して歩き始めた。目的地は
ーー青森 恐山ーー
心霊スポットと有名なそこだが、ある意味幻想的な場所である。現世離れしたようなそこに何をしに行くのか。父は定期的に恐山に行き仕事をしているが何をしているのだろうか。
それを知るのはあと少し、陽が陰にかわるとき。それを知ったとき椿は、何を思うのか。絶望?恐れ?悲しみ?それともーーー喜び?
まだまだ椿の物語は始まったばかりそれに気づいているのは誰なのだろうか。
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