救世主

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 暫し呆気に取られていると、暫し倒れていた晴香(はるか)さんが徐に起き上がる。そして―― 「――きゅ、急に何すんのよ! マジで意味分か――」 「……被害者、ねぇ」  激昂するも、遮る形で呟く瀬那(せな)くん。それから、言葉を続けて―― 「――なわけねえだろ。こっちは全部聞いてたんだよ。さっき、あんたが言ってた発言(こと)ここで全部復唱してやろうか?」 「……っ!? ……で、でもだからって女に手を上げるとか最低!! 今すぐ通報してやるから覚悟しなさいよ!!」 「ははっ、最低か。そりゃ最高の響きだ。ああ、通報しろよ。少なくとも、俺に対してはあんたは被害者――当然、その権利はあるからな。だから、そうだな――だったら、警察(さつ)が来る前にその綺麗なお顔が見れねえくらいボッコボコにしてやるよ」 「……っ!? ひっ、ひいぃ!!」  すると、慌てて下着とスカートを穿き真っ青な顔で部屋を後にする晴香さん。……まあ、それも尤もだろう。その言葉が嘘とは思えないほどに、瀬那くんが見たこともないほど怖い表情(かお)をしていたから。そして、未だ状況に理解が追いつかない僕は、一人ポカンとしたままで。
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