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……いや、ポカンとしてる場合じゃない。何はさておき、今すべきは――
「……あの、ありが――」
「……服」
「……へっ?」
「……まあ、とりあえず穿けよ、下。外、出てるから」
「……あっ、ごめん!」
感謝を告げようとするも、僕の言葉を遮る形でそう口にする瀬那くん。……うん、今更ながら……ほんと、顔から火が出そう。……だけども、
「……あの、瀬那くん。その、外には出なくて良いから……その、後ろだけ向いて頂けると……」
「……そっか、分かった」
扉の方へと向かっていく瀬那くんに、たどたどしくもそう伝える僕。そして、さっと下着、そしてズボンを上げもう良いよと伝える。すると、ゆっくりと振り向きこちらへ近づいてくる瀬那くん。そして――
「……悪いな、遅くなって。大丈夫か?」
「……あ」
ついさっきとは打って変わって、穏やかな微笑で尋ねる瀬那くん。僕の良く知る、あの優しい微笑で。そんな彼に対し、僕は――
「……うっ、ゔっ、ゔあああああああああああああああああああぁ!!!!」
堰を切ったように、みっともなく瀬那くんへと縋り付く僕。ありがとう……そう言いたいのに、言わなきゃ駄目なのに……どうしても、今は言葉にならなくて。それでも……そんな情けない僕に何も言わず、ただ優しく包んでくれていた。
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