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……ところで、それはそれとして……もう一つ、言わなきゃいけないことが――
「……あの、瀬那くん。その、瀬那くんは僕のために、ここまでしてくれたのに……それでも、僕は……」
そう、おずおずと口にする。ここまでしてもらって、本当に申し訳ないのだけど……やっぱり、僕は彼をきっとそういうふうには好きになれない。尤も、明確な根拠があるわけじゃないけど……それでも、少なくとも、今までそういう感情を抱いた相手はみんな女性で――
「……なんだ、そんなことか」
すると、何処か呆れたように微笑みそう口にする瀬那くん。……ひょっとして、僕の勘違い……と言うか、思い上がりだったのかな? まあ、もちろんそれならそれで良い。むしろ、彼のためにもそうであった方が――
「――悪いが、俺はお前を諦めてやるつもりはない。例え、叶わない想いでも……それでも、俺は誰よりお前が好きだよ、逢糸」
「……瀬那、くん」
すると、僕の思考を遮るように、太陽よりも眩い笑顔でそう放つ瀬那くん。……馬鹿だなぁ、ほんと。僕なんかには、本当にもったいないよ、その気持ちは。
それに……どれだけ想ってくれても、僕は応えられない。だから、その気持ちは今すぐにでも他の誰かに向けるべきで。……なのに――
「……逢糸?」
すると、今度はポカンとした表情で尋ねる瀬那くん。まあ、それもそのはず――卒然、僕の右手がそっと彼の左手を取ったのだから。
……うん、自分でも分からないよ……なんで、こんなにも胸が痛むのか。
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