21人が本棚に入れています
本棚に追加
誰もに平等で優しい陛下。たった一人で嫁いできた私の旦那様。
私はメルガ帝国の末の姫、ルゼア。
桃の髪に紅の瞳、メルガ皇帝の色を濃く受け継いだ娘。
旦那様は先の戦争を経て新たに擁立された新国王陛下、名はマセイアス。
ゼーディス王国を戦争の道へと導いた王侯貴族たちはみな処刑され、旦那様は帝国への恭順として私を娶った。
彼は亡きゼーディスの王侯貴族たちからは、汎愛殿下と誹られていたらしい。
国の誰をも愛する愚かな王子殿下であると。身分の分け隔ても、帝国への憎しみも知らない汎愛だと。だから王子殿下時代、継承権を一度は剥奪されていた。
全てが処刑され、彼は我が父の承認を得て国王となったのだ。
彼の有名な噂は本当で、彼は国民を汎愛していた。
女性の憧れる「理想の溺愛の夫」とは、まさに真逆の人だった。
彼は、結婚初夜さえ一緒にいなかった。
城の官吏は私に告げた。
「陛下は敗戦に沈んだゼーディス王国を復興させるため、国民皆に汎愛をもって接しておられます。なので」
「わかっているわ。私は帝国から押しつけられた妻ですもの。重々わきまえているわ」
最初のコメントを投稿しよう!