汎愛殿下が私を溺愛するまでの三日間

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 父は一瞬だけ、瞳に愛娘である私を過酷な国に嫁がせるためらいをみせた。  しかし父は皇帝だ。すぐに私が、彼に嫁ぐ事の利を見いだした。  父は彼に命じた。私を妻として娶るように、と。  そして陛下は私を溺愛しなかった。  個としてではなく、陛下は国民への愛を優先した。それが私は嬉しかった。  だってようやく、私は高貴な血に生まれた役目を果たせるのだから。  ただの溺愛なんて、要らなかった。 ◇◇◇  思い出に浸っていると、陛下は私の手に触れてつぶやいた。 「……会いたかった」  陛下は微笑んだ。少し困ったような、愛おしむような笑みだった。 「離縁はしないでいてくれるかい?」 「陛下のお望みのままに、でございます」 「ありがとう」 「他にお望みはありますか?」 「そうだな……留守にしていた間の話を、少し聞いてくれるかな」 「承知いたしました」  私をベッドに座らせ、隣に座った陛下は訥々と語った。この三年間の顛末を。  敗戦国となった国中ではあちこちで、メルガ帝国への不満が噴き出していた。
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