汎愛殿下が私を溺愛するまでの三日間

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 陛下は前の戦は前政府の愚策が招いた戦争だと訴え、死者もそのほとんどは国王の無謀な特攻作戦によるものだと説明した。そして命を取り留めた人々はメルガ帝国の聖女が今治癒を続けていると明かしてくれた。  メルガ帝国はゼーディス王国をただ支配したいのではない。  前国王の暴走に協力し、我が国の復興を支援してくれているのだと訴えたのだと。  話を真剣に聞く私に、彼はふっと微笑んだ。  謁見の間で見た眼差しとも、結婚の時の眼差しとも違う、砕けた微笑みだった。 「ようやく国は平和を取り戻しつつある。帝国との関係も回復した」  彼はそのまま、私の前に跪く。そして驚く私の手を取り、そのまま甲にキスをした。  国王は唇を触れさせたまま、上目遣いで私を見上げた。 「ルゼア」  初めて、名を呼ばれた。  胸の奥に薔薇が咲いたのを感じた。 「ルゼア」  彼は歌うようにもう一度名を呼んで、続ける。 「これまでは汎愛陛下などと呼ばれてきたが、私はそろそろ汎愛の男は卒業したい。ずっと恋い焦がれていた君だけを愛する一人の男になりたいのだが、構わないだろうか」 「それは……」
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