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「嫌ならば、時計の針が十二時を指すのを待てばいい。その後に君がたった一度首を横に振るだけで、私は君を帝国に返そう」
「……その場合、陛下はどうなさるおつもりですか?」
「そうだな。君に触れられなかった三年間、抱え込んだ思いをまた三年かけて忘れて、汎愛陛下に戻ることにするよ。……戻れるかは、未来の私しか分からないけれどね」
私は考えた。三年間、この方と離れたいと思っただろうか。
思うわけがなかった。離縁の準備をしていたのは、あくまで万が一のためだ。
――尊敬する、愛する夫の妻として、できることをしていただけ。それだけだ。
「陛下」
「ん」
「……私は、知りたいです、陛下を」
「そうか」
「陛下は何でもご存じです。私の故郷での評判も、私がどんな風に城で過ごしていたのかも。けれど私はまだ何も知りません、陛下のことを。汎愛陛下ではない、本当のあなたという人を」
彼の瞳が輝く。私は気恥ずかしくなりながら、続けた。
「教えてください。結婚したあの日から三年間、陛下がどんな風に生きてこられたのかを。……どんな風にどれくらい、私を愛したいと思ってくださっていたのかを」
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