汎愛殿下が私を溺愛するまでの三日間

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「承知した。……思いを伝えるには三年では足りないかもしれない。三十年、いや、三百年――とこしえに、私の傍にいてくれるか?」 「はい。いつか冷たい床に横たわる日々も、陛下のお傍におります」 「ルゼア」  私を見下ろして、汗を滴らせる真剣な眼差しを見て思う。  汎愛の陛下が、私を愛に満ちた眼差しで見つめている。ついに陛下が安心して私を愛せるようになったのだと。平和が訪れたのだと。 「愛しています、ずっと」 「知っていたよ」  陛下は目を細めてキスをする。 「初めて見たときから、君の瞳には薔薇が咲いているようだった。目元を真っ赤に染めて、じっと私を食い入るように見つめて。……ようやく、君の溺愛に応えられる」  そして陛下は歌うように囁いた。私を愛している、と。 ◇◇◇  汎愛の陛下、その呼ばれ方は変わらない。  国民皆を愛する、理想的な君主として末永く愛される人となった。  民と私。陛下が愛する順序を少しでも間違えていたら、陛下は帝国の傀儡と言われる用になっていただろう。私たちは安心して、お互いに溺れられるようになったのだ。  私たちは、幸福に生涯を共にする夫婦となった。
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