汎愛殿下が私を溺愛するまでの三日間

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 彼は怪訝な顔をした。  その顔を見て、私はうっとりした。  以前目を合わせた時よりも、また一層逞しくて素敵なのだ。  旅から帰ったばかりの汚れた軍装で、黒髪も乱れて、そして慌てた様子なのに。  思わずその様子が愛おしくてふふ、と微笑むと、彼が息を呑むのを感じた。  陛下はこほんと咳払いし、テーブルの上のゴブレットの水を一息に飲む。そして前髪をかき上げて私を見た 「君は何を言っているんだ」 「はい。白い結婚は三年で離縁できると、聞いていたので。離縁のためにお戻りなのかと」 「なぜ君と、離縁など……」  彼は酷く嫌な顔をした。  まるで食事に嫌いな食べ物が紛れ込んでいるのを見つけた、子どものように。そして呻くように言う。 「……まだ三年の記念日は明日だ」 「そうなんですか」 「そうだよ。記念日は一緒に過ごしたくて、馬を飛ばしたのに」 「だから深夜に起こしなのですね」 「風呂もまだ入っていない。臭くて本当にその……申し訳ない」  会いたかったんだ、と言葉を濁す陛下。  もしかして記念日になった瞬間、私を国に追い返すご予定なのだろうか。  なるほど。
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