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「恨まれ、ガス抜き役になり、役目を果たせることは、私の喜びです。それにいじめられたのも短い間の話です」
そう。もうすっかり、いじめられていた過去は忘れていた。
「今では大切に扱っていただいて、毎日身に余るほどの交友の機会をいただいております」
「ああ。城に帰って驚いたが、今は皆が君を溺愛しているようだな」
「私の力ではありません。それは陛下の国民皆さんに対する汎愛が伝わったからです。だから、陛下の妻である私にもいじわるができなくなったのです」
「いいや手々君の真意に、我が国民も気づいたのだと思うよ」
彼は慈しむように私の手を取り頬を寄せた。
指は数年前と変わらず節張って長い。手のひらも分厚くて固かった。騎乗を続け、剣を振るい続けてきた人の手だった。
彼は初めて、私を見て柔らかく微笑んだ。
「君は強いな」
「あなた様の妻ですので」
私は陛下の青紫の瞳を見つめ、微笑んだ。
――ああ、あの頃から、この人の瞳は何も変わらない。
◇◇◇
――かつて。私は、溺愛されるばかりの帝国の末娘だった。
帝国の末娘。
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