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「あのさ」
袋叩きすることに躍起になっていたせいで、男達は声をかけられるまで人がいることに気付かなかった。
暴行をやめて後ろを向くと、一人の女性──それも少女が立っていた。カノシタも彼女を見た。
中性的な美女。そういう少女だった。
両手を大きめな白いコートのポケットに突っ込み、地元ではないどこかの学校制服を着ていた。チェック柄のスカートを短くし、暗く淡い紺色のブレザー。それにより白のワイシャツと赤いリボンが際立っている。寒いのか一一〇デニールの黒タイツを身に着け、ハイカットのトレッキングシューズを履いていた。胸は大きくなく腰高。引き締まった体型。太股の付け根に隙間が少しだけあった。
透き通るようなプラチナブロンドに染めた短い髪は、少し乱れていて無造作な印象を与えた。加えて髪の根元は黒くてまるでプリンのような頭でだらしない。その筈なのに、少女のスタイルと顔つきでそれさえもクールな印象を与えていた。
そんな異質な少女がそこにいた。飲み屋街に、一人のJKが佇んでいた。
つまらなそうな目つきだった。だがカノシタはすぐにわかった。その目つきは、あの時の少女と同じ目をしていたことを。
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