記憶が戻り始めた僕

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記憶が戻り始めた僕

 「マモル、最近調子はどうよ」  タケシが僕に聞いてきた。  「あ~、怖いくらいに順調に戻ってるよ 病院の先生もいい兆候ですねって言ってくれて」  「よかったな~。課題の件も半分の量で 免除されたしな」  「その節は、大変お世話になりました」  「いいってことよ。そのかわりに夏フェスの 時にはおまえの姉ちゃんにお世話になった からさ……」  「あの、口の悪い姉ちゃんが車内で あんなにニコニコしてるなんて驚いたけどな」  「ミホさん……優しいよな」と呟くタケシ。  「え? おまえもしかして、俺の姉ちゃんと」  驚く僕に焦ったタケシが、  「いや、ちがう。ただ数回二人きりで 会ったかな?」  「え? は? いつの間におまえ等……」  色んなことを妄想する僕にタケシは慌てて  「ない、ない。お前が今考えてることは  ないから」  と首を左右に振った。  そこへ、モトオがやって来た。  「ね~、二人とも修学旅行のことだけど、 グループ一緒でいいよね? 希望のメンバーを 募れって先生が……」  「修学旅行、どこだったっけ?」  「三重県周辺」  「何で?」  「今流行りの『忍び』に関連する場所を 巡るってなかなかシュールだよね」  「そうなんだ」  と僕は呟いた。  この修学旅行先で全ての記憶を 取り戻すことになるなんて、僕はこの時 知る由もなかった。
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