10人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
目が覚めると
誰かの声が聞こえる。
耳元でそんなに大声で叫ぶと……
うるさいいじゃないか……。
誰かが泣いている。
大丈夫……僕は死んでいないよ。
多分……。
女の子の声が聞こえる。
可愛い声だ……。
きっと、顔も可愛いんだろうな……。
じゃあ、ちょっとだけ目を開けようかな。
一週間も昏睡状態だったマモルの目が
突然、パチッと開いた。
「え?」
「うそ……」
「目覚めた」
「母さん、先生を呼んで来い!」
「お父さん、落ち着いて!
枕元のブザーを押すのよ」
「ああ、そうか……」
ブブブ~、ブブブブブ。ブブブブ。ブ。
天井のスピーカーからは、
「オクウエさん、どうされました?
そんなに押し続けなくても聞こえてますよ。
どうされました? 落ち着いてください」
看護師さんの声が聞こえる。
「マモルが、マモルが目を覚ましました。
パチッと、目が開いたんです。パチッと目が」
「え? は、はい。すぐにドクターに
知らせます。皆さん、どうか落ち着いてください」
にわかに慌ただしくなる病室。
「マモル、マモル、お姉ちゃん、わかる?」
「おお、マモル、タケシ、モトオもいるぞ。
おまえはやっぱり奇跡を起こすな~。
ほら、花ちゃんがお見舞いに
来てくれてるぞ」
「マモル、父さんだぞ。母さんも、姉ちゃんも
爺ちゃんも婆ちゃんもいるぞ。
タケシ君もモトオ君も花ちゃんもいるぞ」
ベッドを囲むように僕の顔を覗き込む
家族と友達。
動けない身体でベッドに横たわり皆の顔を
目で見渡した僕は恐る恐る言葉を発した。
「ここはどこ? あなたたちは? 僕は誰?」
「え? マモル……マジで言ってるのか?」
僕の言葉にベッドの周りにいた皆は、
一瞬で後ろに後退りをした。
「マモル……」
車に跳ねられた僕は、
宙を舞い、地面に叩きつけられ、意識不明で
救急搬送され、一週間昏睡状態だったそうだ。
そして、一週間ぶりに目覚めた僕は、
今までの記憶をすべて忘れてしまい、
記憶喪失になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!