目が覚めると

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目が覚めると

  誰かの声が聞こえる。  耳元でそんなに大声で叫ぶと…… うるさいいじゃないか……。  誰かが泣いている。   大丈夫……僕は死んでいないよ。  多分……。  女の子の声が聞こえる。  可愛い声だ……。  きっと、顔も可愛いんだろうな……。  じゃあ、ちょっとだけ目を開けようかな。  一週間も昏睡状態だったマモルの目が 突然、パチッと開いた。  「え?」  「うそ……」  「目覚めた」  「母さん、先生を呼んで来い!」  「お父さん、落ち着いて!  枕元のブザーを押すのよ」  「ああ、そうか……」     ブブブ~、ブブブブブ。ブブブブ。ブ。  天井のスピーカーからは、  「オクウエさん、どうされました? そんなに押し続けなくても聞こえてますよ。  どうされました? 落ち着いてください」  看護師さんの声が聞こえる。  「マモルが、マモルが目を覚ましました。  パチッと、目が開いたんです。パチッと目が」  「え? は、はい。すぐにドクターに 知らせます。皆さん、どうか落ち着いてください」  にわかに慌ただしくなる病室。  「マモル、マモル、お姉ちゃん、わかる?」  「おお、マモル、タケシ、モトオもいるぞ。 おまえはやっぱり奇跡を起こすな~。 ほら、花ちゃんがお見舞いに 来てくれてるぞ」  「マモル、父さんだぞ。母さんも、姉ちゃんも 爺ちゃんも婆ちゃんもいるぞ。 タケシ君もモトオ君も花ちゃんもいるぞ」    ベッドを囲むように僕の顔を覗き込む 家族と友達。  動けない身体でベッドに横たわり皆の顔を 目で見渡した僕は恐る恐る言葉を発した。  「ここはどこ? あなたたちは? 僕は誰?」  「え? マモル……マジで言ってるのか?」  僕の言葉にベッドの周りにいた皆は、 一瞬で後ろに後退りをした。  「マモル……」  車に跳ねられた僕は、 宙を舞い、地面に叩きつけられ、意識不明で 救急搬送され、一週間昏睡状態だったそうだ。  そして、一週間ぶりに目覚めた僕は、  今までの記憶をすべて忘れてしまい、  記憶喪失になっていた。    
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