21人が本棚に入れています
本棚に追加
もう冷たい亡骸を、肩を組むように小脇に抱えて震える手で玄関の鍵を開ける。
人間、トランス状態に入るとこんな力が発揮出来るものなのか。
ドアを閉めると、やっと少し冷静になった。
「何で私……こんな事……」
部屋の電気を点けると亡骸の顔が見えた。
‼︎
……リョウくん?
間違いない。3次元で唯一の推しのリョウくんだ。
なぜ私の家にリョウくんが……?
自分で連れ帰った事も忘れ、しばらく放心状態でリョウくんの亡骸をただ見つめていた。
カチャン
新聞をとっている訳でもないのに、こんな時間にドアに取り付けられている郵便受けに何かが投函された音がした。
何だろう?
私は立ち上がり郵便受けから郵便物を取ってきた。
分厚い封筒の宛名には私の名前が書かれていた。
誰からだろう?
送り主の名前は記載されていなかった。
私は、リョウの遺体から現実逃避をしたかったのか、無意識にその郵便物を開封していた。
分厚い封筒の中には、パッケージされた布のような物が入っている。
「透明エバーミングシート……?」
私は中味を取り出し、広げてみた。
透明な布製のシートは狭い部屋では持て余す程の大きさで、その一部がリョウの遺体に触れた。
途端に、シュルシュルと音を立ててリョウの遺体をラッピングするように、覆っていった。
何? 何が起こってるの?
布は、着衣の内側にするすると入り込みリョウの肌に沿って包み込んでいく。
ある程度、包み込みが終わると次は収縮して、より密着していった。
5分ほど経った頃、さっきまで土気色だったリョウの肌は綺麗な肌色になり、シートが被さっている事はよーく見ても全く分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!