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ピクリ
「ひっ……今、動かなかった?」
リョウの右手の指が、僅かに動いて見えた。
「う……うーん……」
私は尻もちをついたまま、部屋の端まで逃げた。端までとは言っても、狭い部屋だから高が知れているが。
「君、誰? ここどこ?」
「あ……あの……すみません。私、あなたの事を轢いてしまって……」
「君、名前は?」
「嶌崎花奏です。」
「ふーん……花奏ちゃんかぁ。
で、俺死んだの?」
「それが……私にも何が起きているのか、よく分からなくて。」
「ま、いっか。これから宜しくね。」
ま、いっかって…
リョウは何が何だか全く理解出来ていない放心状態の私の頬に優しく触れた。
そして私の髪を人差し指と中指でクルクルと遊ばせるように触れ、
「綺麗な髪だね。」
と優しい笑顔を浮かべた。
私は、心臓が頭まで昇ってきたんじゃないかと思うほど鼓動が早く大きく、自分でも真っ赤になっているのが分かった。
「ふふふ……真っ赤。可愛い。」
リョウくーん。私はもう2 8歳だけど、男の人に免疫無さすぎて、どうしていいのか分からないんですけどぉーーー。
「こっちへおいで」
ベッドに横たわるリョウが私を呼び寄せる。
彼に後ろから首元へキスをされ、きつく抱きしめられて気絶するように眠りについた。
こうして、私と推しの遺体の奇妙な共同生活は始まった。
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