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VSマスコミ*
最近、朝の支度中に芸能ニュースのチェックが日課になっていた私は、今日も朝から色々な情報番組を見ながら歯磨きをしていた。
「実は、ヘブン・エンジェルズのリョウくんについてなんですが、すでに殺されているんではないかという噂があるんです。コメンテーターの小林さん、この件についていかがですか?」
「そうなんです。目撃者がいる訳でもなく、物証が出てきた訳もないのであくまでも噂ですが、リョウくんがすでに何者かに殺されてしまっているという噂が、最近巷でチラホラ囁かれているんですよ。」
「まあ、噂ですからね。生存されていることをお祈りしていますが、火の無い所に煙はたたないとも言いますし…心配です。リョウくんの件は早く解決して欲しいですね。」
よくまあ飽きもせず毎日毎日朝から晩までリョウくんのニュースをある事ない事公共の電波に垂れ流せるものだ。
とはいえ、どこからの噂かは分からないが、とうとう死亡説が出てきてしまった。
誰かがどこかで調べ上げて、こんな噂になっているんだろうか?
私は、振り返ってベッドの上に横たわるリョウくんの遺体を見ながら溜息をついた。
会社に着くと相変わらず朝から河口がウザい。
「花奏。朝からリョウの死亡説のニュースやってたな。本当は生きてんのにな。」
とニヤけた顔で耳元で囁かれた。河口はリョウが昼間どんな状態かを知らない。
私は思い切り嫌な顔をして河口を睨んだ。
「そんな睨むなよ。他の人には絶対言わないから。」
この所の、私の対河口スキルが上がったせいで、すぐにシュンとなる河口は大人しく自席に戻って行った。
仕事を終えた帰り道、会社の最寄り駅まで向かう途中で、不精髭を蓄えて角ばった輪郭のある男性から声を掛けられた。
「こんにちは。」
元々私はコミュ障だ。こんな爽やかに初対面の男の人から声を掛けられたところで、返答が出来る訳がない。
逃げるように駅へと急ぐ私に意外な言葉が聞こえてきた。
「あの、俺、怪しいものじゃないです。『Office Flower Marsh』の真栄田の…真栄田圭介の友達です。」
と名刺を渡された。
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