水滴

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水滴

私のことなんて気にせず堂々とした彼は、 ゆっくりと薄暗く照らされた光のもとで口を動かす。 微かに香る少しだけ甘いコロンの匂いが鼻につく。 だけれど、 それが私につくくらい近づきたいと思った。 お酒を少し飲むとすぐに頬と唇が赤く染まる体質が好きだった。 その少し熱くなった唇を。 真っ直ぐにあっちを向く顔を無理やりに唇を塞いだら、 どうなるだろうか。 そうやって妄想だけが先走る。 目の前に置かれたジンジャーの微かな香りが 流れ落ちる水滴が彼の言葉に意識を戻す。
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