水滴

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少し黄色い間接照明が大きなフロントを照らし、 奥に行くと黒くて金色の布をかけられたグランドピアノが置かれている。 大きな天井に、大きなエレベーター まるで執事でもついたみたいに 綺麗な正装に身を包んだ男性が私をみて挨拶をする。 おかえりなさいませ。 頭を上げると私の全身を笑顔で見て、褒めてくれる。 今日はいつにも増してお綺麗ですね、と。 真っ赤なワンピースに高いヒールを履いて、 いつも通りなんて嘘だ。 できるだけ、 大丈夫だと。 私はそれでも強く生きるんだと。 そんな思いとは裏腹に 帰ってきてカーテンの開いた大きな窓に映し出される自分の姿は、 ただ強がっただけだという単純な事実に 空元気それすら虚しかった。
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