水滴

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「僕はね…」 彼の視線が少し下を向く。 一回意識を戻した私はまた彼の動作に意識を取られる。 彼の言葉はもう頭に入ってこないみたいだ。 その伏目がゆっくりと体温が徐々に上がる私を見上げる。 紺色のジャケットに、白いシャツ、水色のジーパン 柔らかそうな茶色い髪の毛。 少し垂れた優しそうな目が好きだ。 トイレから帰ってきた彼が少しズボンを手で直す仕草がなんとなく色っぽくて、 でもあまりにも久しぶりに情事でなく、恋から入ってしまった今を目の前に欲情はできなかった。 ただ、 その先が。 気になった。 横を向くときの首筋に少し浮かぶ血管。 首まで赤くなっているのを見るとそこに口付けをしたらどんなふうに感じるのだろうかと。 また、密かに欲情しかける。 26にもなって、 なんでここまで淫らになりきれないのだろう。 近くにこられると恥ずかしい。 隣に座っているのももう少しで限界が来そうだ。
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