水滴

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綺麗になった私なんか、 そんなちっぽけなものに縛られていたのだと言われたみたいに。 だから、 振られたのかな。 ただ好みじゃなかったのかも、 もしかしたら 本当に興味がないのかも。 でも、 それでも目を引くような何かを持っていたらと 私はまるで自分が神かのように 事象の決を全て自分の責任にしていた。 静かな道路に、緑に光る板が終わりを告げながら やってくる。 彼に取ってはもう終わった話なのか。 私には永遠に止められた話の中で、彼は目の前の車に手を挙げる。 「ありがとう。」 彼の口から最後にそう溢れる。 沈黙の時間が結構流れていたんだろう。 1時12分 先に乗せてくれたタクシーの中でスマホが切なく光る。 タクシーに乗った後、 彼のブラウンのジャケットが恋しくて 振る手が、 笑顔が悲しくて。 タクシーに乗る時に少し張る、 綺麗な白いタイトの生地を見る。 私は。
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