地球滅亡のCount Down

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 突然だった。テレビ、ラジオ、スマホ、パソコンそれらに同じ音声と映像が流れたのは。 「はじめまして。私は異形のものでございます。あなた方が神や悪魔と恐れるものです」  不思議なことにその言葉は全世界の人々に通じた。はじめは放送局側の仕掛けだろうと思う人がほとんどであった。 「私たちの判断で地球を滅亡させることに致しました。繰り返す争いに犯罪、汚染とこのままでは遅かれ早かれ地球は滅びます。その原因のほとんどはあなた方人類にあります。ただ私らも鬼ではない。人類が平和を共有できる可能性があるのならば、私たちも矛を収める所存です。あなた方に残された時間は十年。それはあなた方がどう生きるかで短縮も延期もこちらの判断で行います。ゆめゆめ疑いませぬように」  映像はプツンと切れ、直後に各国に激震が走る。サイバー攻撃のように思われたがそうでもなく、一切の痕跡も映像に現れた人物の所在も判明しなかった。  ユカは、それをお父さんと一緒に見に行った映画館のモニターで眺めていた。皆が騒ぐ中、ユカは唇を噛み締める。黙っていないと。これは世界平和に必要なことなんだと思い込むしかなかった。  と言っても劇的に何かが変わる訳ではない。逆に世界で犯罪が増した。そのほとんどが世界は滅亡するからとの言い訳をする快楽犯罪ばかりだった。人々は嘆息しつつも日々を過ごす。だが、犯罪者たちは突然と失踪する。それに対してまた異形のものは電波をジャックする。 「世界滅亡を盾に犯罪を行ったものは全て処分させて頂きました。この世のどこにもう存在致しません。これからも世界滅亡を盾に犯罪を行うものは迅速に処分させて頂きます」  異形のものはまたフッと消える。人々の胸に安堵と怖れが湧いた。自らは大丈夫なのか? 消されるか滅ぼされるか。未来は明るくない。 「ユカは怖くないのかい?」  ユカは、夕飯時に異形のものの話になったとき、お父さんから問われた。ユカは一瞬悩む。会ったことを話すべきか否か。 「怖いよ。でもさ、人が人を傷付けたりするのは、彼がいてもいなくても変わらないよね?」 「まぁそうだね」  言わずに話を逸らした。本当の世界平和が来なかったらどっちにしたって滅ぶ。異形のものは叶えてくれると言った。だったら黙っているしかない。
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