地球滅亡のCount Down

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 次に起こったのは新興宗教の乱立だった。異形のものを神と崇めて信者を増やしていくが、実態はただの金儲け。それと知っても人々は滅亡を逃れられるならばと続々と参加した。  それに対して再び電波ジャックをした異形のものは一言。 「私を利用することは許しませぬ」  新興宗教の教祖は次々と行方不明になる。前と同じならば、この世のどこにもいないのだろう。 「やりすぎじゃないか?」  ユカのお父さんはテレビで教祖失踪の報道を見ながら呟く。 「でも私たちには何もできないから……」  異形のものがユカに会いに来てから三年。まだ世界平和の兆しさえ見えない。戦争の報道は毎日のようにある。今日もどこかで誰かが撃たれて死んでいく。異形のもののやっていることは本当に正しいのだろうか。悪い人をいなくするだけで、平和は来るのだろうか。ユカは悩むばかりだ。  毎晩の祈りはまだ続けている。世界平和が簡単には達成しないこともなんとなく分かってきた。だったら人は滅んだほうがいいかもなんて考えが浮かぶ。ユカが一生戦争に関わらなくて済むかなどと誰にも分からない。知らない誰かのために涙を 流すのはエゴかも知れない。それでも祈りはやめない。異形のものは犯罪者に罰を与えているが、戦争を動かしているものには、罰を与えない。戦争をなくするって、それだけじゃ叶わないのだろうか。 「お久しぶり」  突然に異形のものが目の前に現れる。ユカは今度は驚かず聞きたいことを聞いてみる。 「本当に世界平和って達成できるの?」 「君の望む形じゃないならば」 「それはどんな?」 「滅亡ではない」 「どうして、そんなはぐらかすの?」  異形のものは悲しそうな顔で笑う。 「私には、それほどの力はない。君の願いを僅かに叶えることにもこんなに時間がかかっている。それでも信じてくれるかい?」 「信じるよ。僅かでも世界平和が叶うなら、みんな意識変わるはずだから。だから信じるよ」 「ありがとう。また会いましょう」  異形のものは、フッと消える。次に来るのは何年後だろう?  改めてユカは空に祈りを込める。 「世界を平和にしてください」
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