地球滅亡のCount Down

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 五年。犯罪者は格段に減った。だが戦争はちっともなくなりはしない。凶悪な犯罪が起こる度に犯罪者はどこかに消えて、異形のものが消したと宣言しても犯罪が消えることはなかった。  ユカは人は愚かだと思い始めていたが、それでも夜空に祈るのはやめない。遠い国の戦争が子供が幾人も死んでいると毎日のように報道があるのに、なぜ戦争をやめようとしないのか。理由を調べるのも怖い。毎晩の祈りは事実から目を背けるためにしているのではないか? ユカは自分自身を信じることにさえ迷い出す。  異形のものが言う人類滅亡のリミットまであと五年。滅んでも誰も文句は言うまい。滅亡させる気はないと聞いていても人類は滅亡するだけの理由がある。こうやって年を重ねて何もできぬまま死ぬのだろう。そう思い始めた矢先だった。異形のものがその恐ろしさを人類に見せつけたのは。 「あなた方は何も変わらない。犯罪者を消しても犯罪は起こす。私はあなた方に気付いてくれることを望んでいたのに権力者は気付かぬふりをする。なので私の力を目の当たりにさせようかと思う」  再び電波ジャックをした異形のものがそう宣言した場所は、今世界で最も戦火の激しい場所。異形のものの後ろでは戦闘機が空襲をかけ戦車が大砲をぶちかましていた。 「では、ご覧ください」  異形のものが右手をあげると戦車が消えた。左手をあげると戦闘機が消えた。戦地が一瞬で静かになる。 「私はね、あなた方に戦争をやめろと言っていたのですよ。さて、まだ戦争しますか? 人類滅亡を早めますか?」  その瞬間、世界は恐ろしく静まり返った。人というものが存在しないほどに静まり返った。  数秒かと思っていた静けさは時間を重ね、少しずつ人が動き出す。人々は自分には関係ないと動き出す。  およそ五分。異形のものは電波ジャックをしていた。 「いいでしょう。人類滅亡のリミットは今回は先延ばしにしましょう。何があったかちゃんと確認するんですよ」  画面から電波ジャックをしていた異形のものの姿はフッと消える。そして情報は世界を巡る。 「五分間、世界から戦争が消えました! 五分間、世界から犯罪が消えました! 偉大な五分間で我ら人類は滅亡を逃れました!」  ニュースキャスターが報道で叫んだ。それを見ていたユカは大きなため息を吐いた。 「五分間で偉大か……」  異形のものでも叶わないとは、そういうことか。
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