地球滅亡のCount Down

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地球滅亡のCount Down

 テレビが遠くの国の戦争を報じている。お父さんもお母さんも渋い顔でニュースを見つめていた。 「どうして戦争って起きるの?」 「なんでだろうね……」 「どうしてみんな仲良くできないの?」 「それができたらいいのにね」 「痛いでしょ? 辛いでしょ? 寒いでしょ? そんな想いさせてなんで平気なの?」 「そうだよね……」  お父さんもお母さんも詳しいことは何も答えられない。ユカはふうとため息を吐く。まだ小学生にもなっていないけど、分かることはある。平和が一番だって。そのために何ができるのだろう?  考えてもお父さんに聞いてもお母さんに聞いても答えは出てこない。だから祈ることにした。毎晩寝る前に少しだけベランダに出て手を合わせる。 「どうか世界が平和になりますように」  それをはじめて二年経ってユカは小学生になった。毎晩祈りを捧げても今日も世界のどこかで戦争があって、世の中のどこかで加害者と被害者がいる。無駄なのだろうかと思うときもある。それでもユカは祈りを捧げる。  異変があったのは小学生になってはじめての夏休み。いつものように夜空に向かって祈りを捧げていると男の人の声が聞こえた。 「平和になるならば、どんな痛みも受け入れるか?」  お父さんの声かと背後を振り返る。ベランダ越しの部屋にお父さんの姿はない。ならばとベランダから下を眺めるが人の姿はない。 「痛みは受け入れるか?」 「痛いのやめて」  小さな声で言い返す。 「それは辛いぞ?」 「あなたどこ? そして誰?」 「君の隣で不思議なものさ。そして君の願いを叶えられるものだ」  ユカは両耳を押さえる。 「私、病気じゃないよね?」  姿は見えないのに声だけ聞こえる。 「私はここにいる」  その声と共に目の前に背の高い男性が現れた。黒いスーツに身をまとい、赤い目と青い髪の男性。肌は透き通るように白くユカを優しく見下ろしていた。 「願え。この先もさすれば叶えてあげよう」  ユカは驚いて尻もちをついたが、すぐに立ち上がる。 「本当?」 「僅かの時間でもいいならば」 「お願い。私は平和がいいの。お願いします」  ユカは手を合わせて目をつむり祈る。 「どうか世界を平和にしてください」  次に目を開けたときには男性の姿はなかった。不思議な存在だとユカは朧気に感じる。きっと叶う。そう思うに十分の出来事だった。
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